(のつづき)
じゃあです。
そうやって大切に大切に育てられた、
あたたかい食卓で育てられた子どもが大学生になって、
どんな食生活を送るか、
これはまた別の問題です。
もしかしたらみなさん、心の中では、
「うちの子は大丈夫やろう、
私が作ってるような、
家族で食べさせたようなご飯、
ちゃんと自分で作って食べれるやろう」
って思ってるかもしれません。
けど、全然甘いです。
大学生の食卓調査を
大学教員時代にずっとやってきました。

(略)
こうやって考えていくと、
「さあ、皆さんのお子さん、
大学生になって、
社会人になって一人暮らしを始めました。
ちゃんと自分で作ったご飯を食べる自信はありますか
親として胸を張って子どもたちを社会に送り出せますか?」
と問うた時に、
よくよく考えたら、
「うちの子本当に料理できるんやろうか
大丈夫やろうか」
って不安に思う方もたくさんおられると思います。
そこで、ある小学校の取り組みを紹介したいと思います。
弁当の日っていう取り組みです。
弁当の日というのは2001年、
香川県の滝宮小学校で始まりました。
月にいっぺん弁当の日があって、
子どもたちは学校に弁当を持ってきてそれを食べます。
学校給食がちゃんとあるんですよ。
だけど弁当の日があるんです。
大事なのは、この弁当は親が作るんじゃないです。
子どもが自分で作る。
買い出しから片付けまで全部自分でする。
それが弁当の日です。
その弁当の日の取り組みは
全国的に広がっていますけれども、
あらゆるところで見られる光景がこれです。
弁当の見せ合いです。
しかもこれ、お昼ご飯の時間じゃないんです。
朝一番学校についてすぐ、弁当見せ合うんです。
弁当見せ合いながら何をしてるか…
相手の腹の探り合いです。
「あんた本当に全部自分でつくったん?」
なんで相手の腹を探りたくなるのか、
理由は簡単。
自分が親に作ってもらったからです。
親は一切口出し、手出しは無用なんです。
だけれども、
子どもたちは最初は一人でできないんです。
「だからお母さん、これどうするんだっけ?」
っというケースもあります。
それ以上に多いのは、
子どもが自分でやろうとしているのに、
親が勝手に口を出し出すんです。
「違う違う違う。こうやってやるんよ」
「味はもうちょっと濃い方が…」
と、こういう感じになっていきます。
2001年、たった一校の学校の取り組みが
全国的に広がっていきました。
この時、この子たちは小学校6年生です。
2001年の12歳ですよね。
で、今2025年でしょ。
何年経ってるかって言ったら、
24年経ってるわけです。
12歳が24年経って、この子たち今36歳ですよ。
この子たちがその年になると、
どういうなるかっていったら、
こうなります。
この子とかも面影めちゃくちゃあるでしょ。
ほら、もうあとはね、
なんかいろいろコンプライアンス的に
厳しいんで言わないことにしておきますけれども。
でも、この子たちは36になって、
結婚して、子どもがいる子もいます。
弁当がいるここともある。
子どもたちのために弁当作らないかんよって言ったら、
小学校6年生の時からちゃんと弁当を作ってるから、
こんな弁当をちゃんと自分たちで作ることができるんです。
弁当の日が目指したのはこれなんですよ。
単に調理技術を身につけさせようじゃない。
親からもらった愛情を
ちゃんと次の世代に弁当を通じて注ぎ込める。
思いと技術と志をちゃんと身につけていく。
これが弁当の日の取り組みなんです。
この木登りが得意そうな少年も
ちゃんとお弁当を作っていきます。
この子が作りそうなおにぎりでしょう?
彩りも綺麗です。
今もしかしたら、皆さんの中で
「うわ、すごい」
「小6でこれか、うちの子こんなに作れんわ」
「高校に入って自分で弁当作ったことなんて一度もない」
「うちの子これ作れるかな?」
って思ってる人もいるかもしれません。
理由は簡単です。
やらせてないから。
この子たちはやってるからこれができるんですね。
やればできるようになるんです。
なんか特別難しいことをやれっていうんじゃない。
弁当を作るだけですよ。
やらしたら誰でもできるようになるんです。
できないのはね、やってないから。
それは大学生になったって、
社会人になったって、
親になったって、
やってなんかやらなかったらできないんです。
でも、小学6年生だって、
やればできるようになっていく。
じゃあ、皆さんのお子さん奥さんどうですか?
やらせませんか?
そういうことなんです。
いつやるの?
ということなんです。
滝ノ宮小学校ではランチルームがあって、
そこでみんなで一緒で給食を食べます。
6人班を作って、一年生、1人、2年生、1人、
3年生、4年生、5年生、6年生、
1人ずつ集まってグループを作って給食を食べます。
月にいっぺん弁当の日。
弁当の日で弁当を持ってくるのは5、6年生だけです。
理由は家庭科があるかないか。
親とこういう約束をしています。
家庭科の時間に、
弁当作りに必要な知識、技術は全て学校で教えますから、
お父さんお母さん大丈夫です。
お母さん、お父さんの手は煩わせませんから、
子どもたちに弁当を作らせて持ってこらせてくださいね。
大丈夫です。
という約束なんです。
だから1年生から4年生は家庭科がないので、
弁当の日も給食です。
そうするとこんな写真が撮れます。
大切なのはあの一年生のあの目線。
めっちゃ見てるでしょ。
この子だけじゃないですよ。
ランチルームのあちこちで。
今度は2人がかり。
しかも、この写真と1つ前の写真が
重要な共通点があります。
1つ戻します。
よく見とってください、何が共通点か。
わからん?
もう一回進めますよ。
わかった!?
おお、素晴らしい。
正解です。
この子、今一年生です。
こっちの男の子ね。
これは一年生です。
何を思ってるか。
「いいなぁ。俺も学校に弁当作って持ってきて食べたいなぁ。
俺も早く6年生になりたいな
弁当の日やりたいな」
そう思っているんです。
その5年後、1年生だった彼は
6年生になります。
見ていた立場が
見られる立場になっていくんです。
そうするとまた今度
この子たちが睨みつけています。
「私もあんな弁当を作って持ってきたい。
早く6年生になりたい」
と、成長の欲求が生まれるんです。
できることがかっこいいという
価値観が形成されていきます。
「でも、私、ご飯炊いたこともないし、
卵焼き焼いたこともないや。
よし、今日からお母さんの料理の手伝いしよう。
だってうちの学校、
5年生になったら弁当の日が始まるんだもん。
練習しとかなきゃ」
こうやって成長のスイッチが入って、
自立のプロセスが生まれていきます。
その5年後、1年生だったこの睨みつけてる
般若のような女の子は
できるようになった余裕、
仏様のような顔になります。
そしたらまたこの子が見てるわけですよ。
その5年後、この女の子は、
今度また見られるたちになってきた。
こうやって学校の中で
こういうできることがかっこいい、
うちの学校では、
ああいうふうになったら、
あの学年になったら
これができるようになるんだよっていうことが、
文化として、学校の校風として残っていきます。
通過儀礼です。
こうやって子どもたちの自立と成長の本能のスイッチを
入れてあげる。
先輩の姿を見て、
「お手本効果」と言いますけれども、
「あんな先輩になりたい、
あれができるようになりたい。
よし、俺も努力しよう」
そういう姿を先輩として、
いかに後輩に見せていくか、
その後輩は先輩の背中を見て、
いかにあんな風になろうかって
努力をしていくということ。
それが大事なんだろうなというふうに思います。
さて、最後に、少し違った視点から視点からお話をします。
ずっと食の話をしてきました。
家庭のリアルな食生活の話もいたしました。
現実的には、
日本の子どもの貧困率は先進国の中で最も高いです。
いろんな家庭があります。
いろんな事情の家庭があります。
すべての子どもがちゃんと食べさせられているかというと
そんなことではありません。
食べさせられていない、
親の愛情を十分に受け取れない、
そんな子どもたちもいます。
だからこそ地域があるんです。
だからこそPTAがあるんです。
私も小学校のPTA会長を四年間やりましたけれども、
PTAの役割っていうのは、
いろんな家庭環境がある中で、
おいちゃんはあんたのことをちゃんと見とるんよ、
あなたの人生が大切なんよ
そういうメッセージを伝えていくことだというふうに思います。
それから行政区長になり
いろんな子供たちにいろんな体験をさせてあげたい。
そんな地域活動なんて、
面倒くさいっていう家庭もあるんです。
だけど、子どもたちだけでもおいでよ、
え、今度はコミュニティ制度でくだらならしそうなにするように、めちゃくちゃ社会に駆け入ってきて、同僚にするように、同僚制度も連れてくるから、これやろってね、そういうことにも必死でやってます。
いろんな家庭環境がある中で、
子どもたちもいろんな経験をさせてあげて、
いろんな交流をして、
その中で
「おいちゃんは、地域のみんなは、
あなたのことちゃんと見とるけんね、
大事な存在なんだよ」
って、そういうメッセージを注ぎ込むために、
いろんな活動をやっています。
アフリカのことわざで、
「子どもを育てるためには地域が必要」
があります。
親との関係がタテ、
友達と関係がヨコだとしたら
おいちゃんとか先輩とか
地域の斜めの関係が大事なんです。
なんかこう、四角形を作ろうと思っても、
筋交いがあったら強くなるんですよ。
その筋交いをいかに地域の中で作っていくか、
学校の中で作っていくか、
とっても大事だなというふうに思っています。
そんなメッセージを込めて、
最後に1本スライドショーを紹介して、
質疑応答のコーナーに移ります。
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