食育研究家。九州大学講師/1973年、大分県生まれ。農学博士。/年間の講演回数は100回を超え、大人向け学びの場である「大人塾」「ママ塾」「mamalink塾」等も主宰/主な著書に『いのちをいただく』『すごい弁当力!』『食卓の力』など、いずれもベストセラー/新聞掲載、テレビ・ラジオ出演も多数


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福岡教育大学同窓会、講演文字起こし③

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27、8歳の時にそうやって僕の人生が変わりました。


そういう実績が認められて、
九州大学の教員になることができました。

 

当時は、農家さんたちと一緒に、
里山保全活動とか有機農業の活動とかを一生懸命やっていました。

 

あるとき、一緒に活動してた学生が、
「先生、農業も大事だけど、今の大学生の食生活とってもひどいですよ。そのことを調べてもらえませんか」
と言ってきました。
そこで、学生と一緒に、大学生の食生活を調べることにしました。

 

そこからが、私の食育人生の始まりです。

今どきの大学生の食の調査結果です。
その時だけじゃなくて、ずっと継続的に調査しているので、いろんな年のデータがありますけど、少しだけ紹介します。
九州大学農学部一年生に約250名にこの3食何を食べたか書いてもらうようにしました。毎年実施をしてました。

 

まず九州大学農学部女子学生の3食、一年生です。
Aさん。
1月14日の昼食、食べてない。
1月14日の夕食、一人でコンビニ弁当。
1月15日の朝食べてない。3食で食べたのはコンビニ弁当だけです。

Bさん、1月14日の昼食、おにぎりとブラックサンダー
皆さんブラックサンダーご存知ですか?知ってるいや、知らないっていう人もいますね。これがブラックサンダーです。大人気なんですよ。
14日の夕食はカルボナーラとサラダ、15日なんですが食べてない。

Cさん、14日の昼食がサラダ、14日の夕食がアイス、15日の朝食が食べてない。サラダアイス食べてないです。

Dさん、1月14日の昼食がイタリアンバイキング、1月14日の夕食がもみじ饅頭、ミルクティースナック菓子、1月15日の朝食がインスタントスープ、もみじ饅頭、スナック菓子。どんだけもみじ饅頭が好きなのか、もしくは広島県出身の郷土愛にあふれた女の子なのかもしれません。

 

そして皆さんの後輩にあたります福岡教育大学
将来学校の先生になって子どもたちに食育とか教えるんですよ。
その先生たちの卵が大学時代、こんな食生活です。

6月3日の昼食がチキンフィレオバーガー、6月3日の夕食がうまかっちゃん。ああ、うまかっちゃん美味しいもんねと思うかもしれませんけど、これ通じるのは九州とか西日本だけです。東北に行くと「うまかっちゃんって何ですか?」となります。

Fさん、3日の昼食がパン、3日の夕食がパン、4日の朝食はパン、パンパンパン。

Gさん、3日の昼食はカレー、3日の夕食はジョイフルでネギトロが、4日の朝食はセブンイレブンで廃棄のおにぎり。という感じなんですよ。

この子たちが大学一年生ですけど4年後に社会人になります。
学校の先生にもなるでしょう。数年後結婚して、場合によっては子どもができて家庭を作り、子どもたちに、食を提供するようになっていきます。
この現実が見えてきました。

僕は農学部として、それまで真面目に農業の論文を一生懸命書いてましたけれども、それだけじゃダメだなということに気がつきました。いくら農家さんが頑張って有機農業をやって、無農薬、無化学肥料で米作ったって、米食ってないんですよ。消費者が。
あ、そっか。こっちから変えていかないとダメだ。
農業なら今、農業就業人口って2%なんです。一生懸命やったって2%にしか届かないです。食なら100%いける。この人たちが一生懸命地元産の米を買って食べるようになったら、米の消費量が増えるんですよ。あ、そうかって。自分はそっちの方からいこうと思いました。

また、別の切り口から言いますと。
今の米価格の高騰についてもそうですけれども、日本中に有名な農業経済学者たくさんいます。東大の先生、京大の先生、九州大学の先生、知り合いの先生もたくさんいます。
何もできてないじゃないですか。
あら、賛同得られないですね。
あれだけ優秀な先生方がいて、論文たくさん書いてるんだったら、知恵出し合って、この問題をどうか一年で解決しようとすればいいのに、何も解決できてない。
そっか、今までのアプローチだけじゃダメなんだって思いました。
自分はこっちから行こう、食から変えていこうということに気がつきました。
で、食育の活動を始めました。

 

その時にですね、いろんな方々と出会っていくことになるんですけれども、こんなデータとも出会いました。
凶悪少年犯罪と食生活の調査というのが行われていて、98年に茨城県警、2002年に群馬県警から少年犯罪と食についての調査報告が発表されています。両県警の調査結果、ほぼ同じ内容だったそうです。
どういう点が同じだったか。
非行少年、特に粗暴犯の食生活の大きな特徴。
朝食を一人で食べる。
家以外で朝食を食べる。
夕食を一人で食べる。
家族で鍋を囲むことがない。
別にこれ、鍋にですね、非行防止成分が500mg入ってますから…とか、そういうことではないんですよね。今、居酒屋に行ったら一人の鍋ってありますけれども、お家で鍋作る時っていうのはだいたい家族が揃う時ですから、鍋囲むことがないということは、家族で食卓を囲んでないっていうことなんですよ。それからジュース類や一般少年が多く飲んでる。
朝からカップ麺を食べる。
非行少年が嫌いな食べ物。
果物が嫌いです。
俺ね、最初に僕もこのデータを見たとき、「あれ?」って不思議に思いました。
当時はうちも子育て真っ最中だったんで、子どもたちに果物を一生懸命食べさせてますけど、大好きなんでですね。味とか甘くて食感はみずみずしいので、そういうのは大好きだと思うんです。
でも、よく考えると果物ってですね、手間がかかる果物が結構あるんですよ。
イチゴとかだったら洗ってパクでいいです。
しかし、例えば、糸島ってみかんの産地ですけど、甘夏とかがめちゃくちゃ取れるんですよ。仕事柄、農家さんのところに調査に行ったり遊びに行ったりするとですね、「佐藤君、お土産に甘夏持って帰るね」って言って「あ、いいんですかいただきます」「何個いるね」って言って「いや、もう一個で十分です」って言っても、コンテナ1個なんですよ。
その甘夏もらっても、甘夏ってそのままバクって食べるわけにもいかず、まず黄色い硬いのを全部皮むいて、こうやって剥いて、それで食えるかっていうと、あの白い渋皮が出てきて、それを剥いて、はいどうぞじゃないですか。
親がその手間を嫌がって、あんた面倒くさいって。
そんなんやったらもうジュースでも飲んどき!
ってなると「果物が嫌い。果物を食べる習慣がなくて果物嫌いです。そして一般少年がジュースを多く飲んでいる」っていうような生活スタイル、食行動が出来上がるんじゃないかなというふうに推測してます。
それから牛乳が嫌いです。
おひたしが嫌いです。
胡麻和えが嫌いです。
ご飯が嫌いです。
野菜が嫌いです。
味噌汁が嫌いです。
魚の煮物が嫌いです。
これよく見るとですね、全然普通の食べ物ばっかりなんです。なんかパクチーが嫌いですって言ったら、いや、パクチーが私も嫌いですってなるんですけど、あの、全然普通の食べ物だけど、これはファミレスじゃなかなか食べれないし、コンビニでも買えないし、ファーストフードじゃ絶対食べられないです。これらは家庭料理なんです。おうちの人がスーパー直売所に行って、食材買ってきて、台所で料理をして食卓に並べる。その家庭料理が嫌い。家庭料理を食べる習慣がないということです。
茨城県警本部少年課では、親に食事を親に作ってもらい、それを食するという習慣の乏しさが非行と関係することがうかがえるというふうに結論を付けています。警察が言ってるんです。
非行少年をずーっと見てきて、その食生活を調べてみると、「こういう特徴がありましたよ」「ちゃんと食べさせられてないですよ」「手間暇かけて家庭料理を作ってもらってないですよ」「だから心が育まれないんですよ」っていうことを警察が発表しています。
なるほどなっていうふうに思いました。
今これだけ豊かな時代ですから、コンビニ行って、ファミレスで行って、ファーストフードに行ったら、お金出せばいくらでも美味しくてカロリーがあるものを安く食べることができます。だけどそこに愛情とか手間暇は感じられないんです。
親が台所に立って、あの子のためにっていう一生懸命料理をする。その姿を見て、子どもたちって愛情を感じて、「ああ、自分はこんなに大事にされてるんだ、じゃあ自分も自分の体大事にしよう、命大事にしよう、自分の人生を大事にしようって」思い至れるんじゃないかなというふうに思っています。
それが1日3食、一年間365日、約1000回です。
それが5年、10年、15年で積み重なっていく。
5000回、1万回、1万5000回って積み重なっていく。
その間にあんたのことが大事だよ。あんたのことがそれだけの価値があるんだよ。あんたの食べるものにはそんだけの価値があるよ。だから手間暇かけて作るんだよ。
それが子どもの心の中に添い込まれていって、子どもの心が愛情で満たされていって、だんだん素敵な大人になっていくんじゃないかなということに気がつきました。

 

(つづく)

 

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