食育研究家。九州大学講師/1973年、大分県生まれ。農学博士。/年間の講演回数は100回を超え、大人向け学びの場である「大人塾」「ママ塾」「mamalink塾」等も主宰/主な著書に『いのちをいただく』『すごい弁当力!』『食卓の力』など、いずれもベストセラー/新聞掲載、テレビ・ラジオ出演も多数


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福岡教育大学同窓会、講演文字起こし②

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まぁ、それでもいろいろ悩みながら農家さんのところに通ったり、たまに大学に行って勉強してました。
そしたら、ある時に、廊下を歩いてたらポスターがあったんです。
論文コンテスト作品募集、最優秀賞、賞金100万円。
「おっ!100万円もらえる!」って思ったんです。
でも、その瞬間にふって思いました。

 

いや無理、無理、無理って。
だってこんな論文コンテストで最優秀賞とれるなんか、最優秀賞取れるなんか、すごく優秀な人で、例えば東大生と京大生とかいっぱいいる。
自分は九大生の、しかも不登校ですよ。
「自分なんか無理だ」って一瞬思ったんです。
だけれども、「あれ、自分は農家さんに全然恩返しできてないや」っていうことに気がつきました。
で、「農家さんに教えてもらったことを全部文章にまとめて、論文として作り上げて、で、それで提出をしよう。それが、賞に入ろうが入るまいが、賞金もらえようがもらえまいが、「皆さんのおかげでここまで来ることができました」ってやったら、農家さんへの恩返しになれるかもしれない。「自分にできることってそれしかないんだ」っていうふうに思いました。

バーって1週間くらいで書き上げて、何も考えずにポストに投函をしました。
そしたら数ヶ月後にこう連絡があって、「佐藤さんですか?」と。「佐藤さん、ちょっと確認ですけど、あの提出された論文、盗作ではないですよね」と。

いきなり失礼なことを言った。

「盗作でもないですし、引用は論文のマナーに則ってちゃんと引用文献をつけてますし、どのページからちゃんと引用したと書いているので、問題はないと思います」「わかりました。過去にちょっと問題になったことがあったんで、何月何日空いてますか」「空いてます」「もし入賞していたら、事務局から書類が届きますので、それに従って当日東京までやってきてください」という風になったんです。

 

後日、書類が届いたんですよ。「おお!」って思って、準備をして東京に行きました。
全国各地から優秀な学生さんが集まっているわけですよ。

 

僕、何を考えたのか、自分の戦闘服は作業着だって、農作業着で行ったんですよ。みんなスーツなのに。で、佳作から呼ばれていくんです。
佳作5万円、10名。何々大学、何々さん。
次、優秀賞10万名、5名。
特別優秀賞50万名、2名。
僕、名前呼ばれないですよ。
「作業着が良くなかったかな」と思ったんですけど。
最優秀賞、九州大学佐藤剛史さんって呼ばれたんです。

「え?」みたいな。

で、不登校の落ちこぼれがいきなり日本一ですよ。

 

しかも優勝賞金100万円。副賞、図書券30万円分。加えて、熱帯雨林再生のためにマレーシア旅行40万円分とからったんですよ。

 

九州大学の副学長も臨席されていてですね、バーって寄ってきて、「君が佐藤君かよくやった!我が校の誇りだー!」みたいな。「…不登校なんですけど」みたいな。
九州大学からも表彰するから、戻ってきたら総長室に来てくれ」って言って。戻ったら九州大学の総長賞っていうのをいただいて、また10万円とかいただいて。
まあ、お金の話ばっかりしてますけど。

まあ本当に当時はですね。それで本当にいろいろ救われました。人生が変わったと言っても過言でありません。

ただ、大切なのは日本一を取ったから。たくさんの賞金をもらったから。自分の人生が変わったと思ってないです。

 

1枚の紙切れが僕の人生を変えました。
その表彰式当日にですね、紙が配られました。この論文コンテストに何人の学生さんが応募したか、何作品集まったかという資料でした。

調べてみたらですね、当時から大学生の数、減ってますけど、当時全国に280万人ぐらい大学生がいました。
280万人。で、280万人全員にですね、「100万円欲しいですか?」って聞いたら、「欲しい」っていうはずです。
では誰でも応募できるとして、「じゃあその280万人のうち実際に何人の人が来たでしょうか?」っていうのが最初のクエスチョンです。280万人の大学生のうち,何人が応募していたでしょう?
地球環境を守るというテーマだったので、学部、学科分野問いません。
『10万人』
10万人!

正解は100人でした。
そうなんですよ。100人。
でもその気持ちはよくわかりました。
僕もポスターを見た瞬間に「あ、無理」って思ったんです。最初から。
「自分には無理、関係ない」って思って、そのまま通り過ぎようとしたんです。
だけど僕は農家さんに恩返しがしたいなっていう思いがあったから、踏みとどまって一文字目を書くことができました。
で、最後まで書き続けてポストに投函することができました。
それをやったのって280万人のうち、たったの100人なんです。

「あ、社会ってこうなってるんだ」ということを痛感させられました。
多くの人たちは目の前に可能性がたくさんあるのに、「自分には無理だ」「自分には関係ない」と思って、自分から手を伸ばさないんですよ。

可能性とか権利って、自分から手を伸ばしてでしか、自分のものになっていかない。
僕は、農家の人に恩返しをしたいっていう気持ちがあったからこそ、手を伸ばすことができた。

でも、そうやって応募しなかったら、今までの可能性って280万分のゼロなんですよ。
それがどんな、駄作でもいい。書いてしまって応募すれば、100分の1まで可能性が上がるんです。
この差はめちゃくちゃでかいですよ。
しかもさっき言ったように、

佳作10作品、優秀賞5作品、特別優秀賞2作品。最高優秀賞、最優秀賞1作品、18作品でしょ。100分の18ですよ。約5分の1。
クラスで1位になるより簡単なんですよ。

これが人生だ、これが社会の仕組みだということが分かりました。
やったものにしか権利を与えられない。
やってみれば結構うまくいく。

しかも諦めなかったら、かなりその確率が上がっていくということを実感しました。

「人生はできるかできないかじゃない、やるかやらないか」ということを身をもって経験しました。

それ以降、僕は「よし、思いついたことは何でもやってやろう」っていうような生き方ができるようになりました。

できなくても、やり続けてたらできるようになるんです。

それが成長です。

 

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