ショート。
だれを主人公にするか
どんな場で
誰に語らせるかによって
ニュアンスが変わってくる。
最初は、デイルームでの
入院患者同士の会話にしようと思ったけど
棘や角が立ちすぎたり、
優劣や善悪がはっきりしすぎて
設定を変更。
こんなショートでも
結構考えてる(笑)
医療の「平等」と「公平」
責任者のベテラン看護師が問いかける。
「はい、他に引き継ぎ事項ありますか?」
ある新人看護師が答える。
「そう言えば、今朝、退院された○○さんから、最後にこんなことを言われました」
入院患者に対する、サービス、ホスピタリティが違いすぎる。体は元気だから、トイレに連れて行ってほしいとか、お風呂で背中を流してほしいとは言わない。
そりゃ、介護、看護が必要な人もいる。
だけど、他の年寄りには、定期的にご機嫌伺いに来たり、話し相手になったり、食事も食べやすい麺類にしましょうか、とか、みそ汁の玉ねぎを抜いてあげたりしている。
一方で、俺は、ほったらかしでずっとお粥。「何か要望はありませんか?」の一言もない。
心が狭いだなんて思わないでほしい。
体が自由に動くこと、自分のことは自分でできること、なんでも食べれることは、本当にありがたいことだと思う。
俺のために使う時間や労力は、お年寄りのために使ってくれた方がいい。
だけど、それは患者の思いやりであって、患者側から言うこと。
サービス、ホスピタリティを提供する側は、同じ入院料金をもらってるのだから、できるだけ同じようなサービス、ホスピタリティを心がけるべきだろ思うがどうだろう?
これだけ、権利とか、人権とか、平等とか、個性の尊重とか言われている時代だから。いろんな患者がいて、いろんな思いや考えを持っていることにも配慮すべきだと思う。
とはいえ、本当にお世話になった。
ありがとう。
すっかり元気になった。
また、お世話にならなくていいように、気をつけるよ。
「で、あなたは何と答えたのですか?」
「すいませんでした。気をつけます…って」
「そう、患者さんには権利があります。掲示板にも『患者さんの権利と責務』が貼ってあるでしょ?」
「一行目を読んでください」
「誰もが個人の尊厳を守られ、良質な医療を公平に安心して受ける権利があります」
「そうです。患者さんには、権利があります。そして大事なのは『公平』。『平等』ではありません。では、公平と平等の違い、わかりますか?」
「わかりません」
こういうことです。
「医療の世界は平等ではなく、公平なのです。必要な人に、必要な医療を届ける。必要な人に、必要な手を差し伸べる。それが医療です」
みんな、頷く。
「でも、その方が言われたように、『いろんな患者がいて、いろんな思いや考えを持っていることにも配慮すべき』はそうですね。気をつけましょう。お疲れさまでした」
「お疲れさまでした!」
(おわり)
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