昨日、2回目の治療。
治療は1時間半、
治療後5時間は絶対安静。
何も報告がないので
無事終わったのだろう。
鎮静剤のせいで
5時間のうち
寝ている時間、ボーっとしている時間も長かったけど
覚醒後は、(起き上がって絵は描けないので)
横になってショートのネタを考える。
以下、社会派のショートを。
『寛容』
学校や社会の一般論として「人権の尊重」「多様性を認める」「ルッキズムやエイジズムのような偏見をなくす」「いじめやハラスメントを撲滅する」等々、そんな理想がちゃんと確立されたし、最近は特に声高に叫ばれている。
一方で、テレビをつけると、芸能ニュースや迷惑動画、ニュースのコメンテーターの迂闊な発言、炎上しまくってる。誰かが非を見つけ出し、火をつけ、みんなでそれに油を注ぐ。鎮火しかかってきたら、誰かが新たな火種を見つけ出し、ネットに投下する。
一方で、炎上を狙った記事や動画をわざわざupする人もいるし、正義の名のもとに「私人逮捕」し、それをを振りかざしてupする人もいる。そしてそれがまた炎上する。
だからこそ、「人の目が気になる」「人にどう思われるかわからない」と、言いたいことが言えない、やりたいことができないという人も多い。
理損と現実の乖離がどんどんと多くなって、「人の目が気になる」「人にどう思われるかわからない」という、萎縮、自重の雰囲気に拍車がかかっている気がする。
さて、今回入院するにあたって、まず気をつけようと思ったのがいびきだ。最近は、いびきをかきにくくなったとはいえ、いびきをかく可能性もある。同室の療養している患者さんの睡眠を邪魔してはいけない。そこで、鼻呼吸テープ(口に貼るテープ)を準備。
しかし何のことはない。
いざ入院してみると、いびきがうるさいのは同室の患者さんの方だった。いびきだけじゃない。無呼吸症候群、独り言、寝言、うめき声、ナースコール。入院した当初は、「真夜中の動物園だな」と思ったほど。
別な部屋には、フロアー中に響き渡るような大声で、昼夜を問わず「おーい、おーい!」と叫び続けている人もいる。最初は、外の工事現場のかけ声かと勘違いしたほどだ。
声だけじゃない。おならの音にしてもそう。男性部屋だからかもしれないが、みんな、とき、ところかまわず「プッ、プッ」「ブ~」とやっている。病状によっては、腸にガスがたまりやすくなるだろうから、仕方ないのだ。
そういうことについて、誰も気にしてる様子はなく、誰も申し訳なさそうにする様子もない。少なくとも、「うるさい!」「寝れない!」「あの音をどうにかしてほしい!」なんてクレームは聞いたことないし、さらに言えば、「この音、どこから聞こえてくるの?」「いつまで続くの?」と気になっているのも私だけかもしれない。それが気になってすぐに目を覚ましてしまうのは、私だけだけだろう。
寛容で、許し合う、そういう雰囲気がある。
ここは病院なのだ。
高齢で重篤な患者さんも多い。みんな不完全で、誰かに迷惑をかけ、誰かに頼って生きている。生きようと思えば、誰かに迷惑をかけ、誰かに頼らざるを得ないのだ。
みんなそのことを痛感している。それを許してもらわなければ生きていけないし、許さなければここには居れない。そうして、お互い許し合う、寛容な雰囲気がある。
そしてそれは、看護師さんたちのおかけだ。家族でも嫌がるような無理難題を、文句も言わず、嫌な顔一つせずこなしてくれる。「申し訳ない」と思う余地もないほど、優しく笑顔で接してくれる。
お腹が痛い、便が出ないという患者さんに「座薬を持ってきましょうか?」「座薬、自分で入れますか?私が入れましょうか?」と笑顔で対応している。
別な患者さんは、「入れ歯を洗ってきて。で、ご飯食べさせて」なんて、看護師さんにお願いしている。正直、ちょっとビックリした。毎回、食べさせてもらっているわけではないのだ。それでも、看護師さんは笑顔で応える。その翌日に、その患者さんは退院していったことに、さらに驚いたけど。
現実的には、多くの患者さんがいて、多くの看護師がいて、お互い「誰はどこまでできる」と把握するのは不可能で、とすれば、「あなたはこれができるんだから」といちいち精査、吟味するよりは、「基本、リクエストには応える」としていたほうが合理的なのかもしれない。
その結果、程度の差こそあれ、「甘えていい」「頼っていい」という雰囲気が、この病院のこのフロアーの覆っているのかもしれない。
まぁ、こうして、そんなことで「動物園みたいだ」と私が驚くこと自体、「自立」「自助」「自己責任」「他人に迷惑をかけてはいけない」等の価値観の賜物なのだ。今の不寛容な炎上社会は、「自立」「自助」「自己責任」「他人に迷惑をかけてはいけない」等の価値観が、行き過ぎた結果なのかもしれない。
そんなことを考えながら、今日もこのフロアー、この部屋はにぎやかだ。
そしてそれを誰も咎めない。
看護師さんが、体温、血圧を測定しに来て、患者さんに優しく語り掛ける。
「○○さん、お通じはでましたか?」
「え?何?○○△△□□?」
「お通じはでましたか!?」
許すも何も、聞こえてない人が多かった。
(おわり)
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