食育研究家。九州大学講師/糸島市行政区長/1973年、大分県生まれ。農学博士。/年間の講演回数は100回を超え、大人向け学びの場である「大人塾」「ママ塾」「mamalink塾」等も主宰/主な著書に『いのちをいただく』『すごい弁当力!』『食卓の力』など、いずれもベストセラー/新聞掲載、テレビ・ラジオ出演も多数


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創作活動④-入院ショート3本目-

一度、やりはじめると
過集中というか
ゾーンに入るというか
作業興奮して「次!次!」となるというか。

 

 

ショート3本目。

 

 

『白衣の天使は夜にも舞える』

さいころから、人の役に立つ仕事に就きたかったし、いわゆる「白衣の天使」に憧れていました。高校のときの進路相談では、今後、AIやロボットが発達したとしても、看護師と言う仕事はなくならないだろうと考えました。確かに、大学に進学し、大手企業に勤める方が、経済的には恵まれているかもしれません。だけど、小さいころに、おじいちゃんの肩たたきをして、おじいちゃんがとっても喜んでくれたように、目の前で具体的に誰かが喜んでくれる、そんな仕事に就きたいと思いました。

 

大学を卒業し、看護師国家試験に合格して看護師資格を取得することができました。
新卒での最初の勤務先が、この総合病院。
思った以上に看護師と言う仕事はタイヘンでした。まず、交代制で夜勤があります。入院患者さんはお年寄りも多く、看護だけじゃなく介護的な仕事も多いです。トイレに連れて行ったり、お風呂に入れるお手伝いをしたり、体を拭いたり。おむつを替えたり、おしりを拭いたり。単なる話し相手だけにも、相当に時間がとられます。

一晩で、一人の人に何回もナースコールで呼び出されます。年をとると、トイレが近くなるのです。それが夜なんて17人担当です。「背中が痒いのでかいてほしい」と呼び出されることもあります。

他の患者さんの対応をしているため、ナースコールにちょっと遅れると、漏らしてしまっているということもザラ。そうするとまたシーツを替えたり、床を拭いたりと仕事が増えます。

 

新卒の同僚と「もう辞めたい」という話はしょっちゅうしていますし、実際に辞めて行った同僚もいます。

 

こんな総合病院でなく、夜勤のない、入院のない小さなクリニックも看護師不足だから、求人はあります。だけど、小さなクリニックでは、看護師募集の条件が、臨床経験3年以上とかなのです。
というのは、そんなクリニックでは、患者受付や電話対応、バイタル測定、採血、点滴・注射、診療の補助など多岐にわたります。看護師が少人数のため、看護師一人ひとりのできる仕事の多さが求められます。だから、新卒では難しいし、教育・研修のための時間が取れません。

そこで、新卒の看護師は、まず「総合病院」「大学病院」に就職し、そこで、教育・研修を受けながら、実践的に看護師としての技術・意識・経験を獲得していきます。そこで3年以上働いたのち、クリニックに再就職みたいなコースをたどるのです。
そうした医療構造を維持するためにも、クリニックでは「臨床経験3年以上」みたいな条件が課されているのでしょう。

 

4月に新卒で働き始めて半年。最初は上手くさせなかった点滴も、一発でさせるようになりました。最初は抵抗のあった、トイレのお世話ももう慣れてしまいました。

見えないコミュニケーションのノウハウもあります。
患者さんからのリクエストを聞いて、それに対応していると後手後手に回ってしまい、さらに忙しくなります。先ほど言ったように、そうしてトイレに遅れて、漏らしてしまうようにです。
だから、先回りする、先手を打つことが大切です。しかも、できるだけ、楽な方法がいい。
簡単です。
「○○さん、次、14:00から、○○をするんですか、○○でいいですか?」とニッコリ笑って、優しく問いかけます。まず、○○さんと名前で呼びかけるのが大切、ニッコリ笑うのが大切。そして、少し肩に手を添えたりするのが大切。そうすれば100%「それでよかです。お願いします」となります。

 

さて、先日、病院スタッフで懇親会がありました。1次会、2次会と続き、お酒好きな数名は先生に連れられていわゆるクラブへ。若者が踊っているクラブではなく、ボックス席でお姉さんがお酒をついでくれるようなクラブです。

お店には、酔っぱらった男性客もいて、興味深く見ていると、すぐにお姉さんに触ろうとするような人もいます。病院もクラブも、本質的には変わらないと思いました。お酒を飲んでも、病気になっても、そういう男性はそうなのでしょう。

 

お姉さんの対応が非常に勉強になりました。すぐ肩に手を回してくる、すぐに触ろうとしてくる男性の手を、笑顔でギュッと両手で握りしめます。そして男性の膝の上に、手を置き、その上から、手を添えています。添えているというか、自由にできないように抑ええつけているのかもしれませんが、男性客は悪い気はしていないようです。お姉さんの方から、手を握ってくれているし、笑顔で話を聞いてくれているのですから。

 

自信ができました。

 

私、看護師辞めても、クラブで働いていける。
今は、「看護師辞めたら、働き口がなくなる」という切羽詰まった感はなくなり、できる限り看護師で頑張ろうと思えるようになりました。
「○○さん、次、14:00から、○○をするんですか、○○でいいですか?」とニッコリ笑って、優しく問いかけます。○○さんと名前で呼びかけるのが大切、ニッコリ笑うのが大切、少し肩に手を添えたりするのが大切。

 

(おわり)