食育研究家。九州大学講師/糸島市行政区長/1973年、大分県生まれ。農学博士。/年間の講演回数は100回を超え、大人向け学びの場である「大人塾」「ママ塾」「mamalink塾」等も主宰/主な著書に『いのちをいただく』『すごい弁当力!』『食卓の力』など、いずれもベストセラー/新聞掲載、テレビ・ラジオ出演も多数


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創作活動②-はじめてのショート-

デッサンを終え、
星新一のショートを読んでいたら
ショートの書き方がわかった気がする。

 

一応、自己啓発系長編小説を
2本出版している作家なのだ。

 

どんでん返しの中に
「わかる!」という共感の要素を入れた
オチを作る。

で、オチにたどり着くように
ストーリーを増幅していく。

 

で、はじめてショート書いてみた。

 

『退院』

その老人は80歳を超え、糖尿病を患い、腎臓も悪くし、現在入院中。

老化のせい、そして病のせいもあって、トイレに行くにもナースコールを押し、看護師に来てもらい、手を借りたり、調子がよくないときには車いすが必要なほどだ。お風呂も一人では入れないから、看護師の介助が必要だし、毎日、お風呂に入ることもできないので、体を拭いてもらわざるを得ない。
若い女性の看護師に介助してもらうのは、男性として嬉しくはあるけれど、恥ずかしさや情けなさもある。身内に頼んだ方がよっぽど気は楽だ。
加えて、食事の前には、必ず血糖値を測り、そのうえで単位を決めてインシュリンを打たなければならない。
ずいぶんと前から、糖尿病を患っていたのだけれど、家にいる間は面倒で、インシュリンを打たないことも多かった。それでいよいよ病状が悪化し、入院せざるを得なくなったのだ。
トイレに行くのにも介助が必要なほど年をとったとはいえ、博多で育った男のプライドと意地と粋はある。このまま老い衰えながら、薬の力を借りで、細く長く行きたくはない。
家に帰り、自由に生活したい。美味しいものも食べたい。なによりタバコが吸いたい。
「いつ退院できるんやろうか?」と看護師に聞くのが日課だ。
「ちゃんと自分でインシュリンが打てるようになってからです」、こう答えるのも看護師の日課だ。
「だって目盛りが見えんちゃけん」
「じゃぁ、見えるように大きく書いてきます」
看護師も負けていない。
「これで、どうですか?え?まだ見えない!?先生に相談してみます」


数日に一度の医者の健診。
自分の年齢の半分にも満たない、若い先生だ。こういう総合業病院は、医者も看護師も、知識、技術、経験を身につけるために、若い人が多い。
その先生とも同じやりとりの繰り返し。
「いつ退院できるんやろうか?」
「ちゃんとインシュリンの打ち方を覚えてからです」
「覚えたって打たんバイ。今までだって打たんかったんやけん」
「じゃぁ、退院はダメですね」
医者は、カルテを見ながら渋い顔で答える。
若い医者とは言え、自分は医者だし、責任があるのだ。患者のリクエストを安易に受け入れ、万が一のことがあったら大変だ。患者の命と健康を守るために、最善を尽くさなければならない。自分にそう言い聞かせて、毅然とした態度で答える。

 

ある時は「あ~○○さん、透析前にそんなに水分とったらいけないって言ったでしょ!このお茶の半分、捨てますからね!」と、看護師さんが部屋にある流しにお茶を捨てる。
「捨ててよかよ~。また、水汲んで飲めばいいっちゃけん」
「ダメです!」
半分、本気で、半分、こんな会話を楽しんでる。
健康なんか関係あるか、太く短く生きるのだと、軽口を叩くのが博多の男の意地なのだ。

透析後、横になっていると先生が診察にやってきた。
「先生、もうよかっちゃない。退院させてくれて」
「う~ん、まだダメです」と、カルテを見ながら渋い顔で答える。「もう少し、頑張りましょう」

 

それからも毎日、毎食、血糖値の測定。インシュリンの注射。
そして看護師さんと「いつ退院できるやろうか?」のクダリの繰り返し。
体調は以前に比べ安定している気はするが、よくなっていく気配はない。何より、自由がない、慣れ親しんだ生活を送れないのが何より苦痛だ。いつまで生きることができるかは分からないが、このまま病院で死にたくはない。
数日後、期待せずにいつものように聞いてみた。
「先生、退院はいつですか?」
先生はカルテを見ながら言った。
「そうですね、来週の火曜日に退院しましょう」
予想もしなかった答えに顔が青ざめる。
「…せ、先生、もうダメってことですか?」
喜ぶかと思っていたら、予想もしなかった反応に、先生もリアクションに困る。言葉に詰まる。
「い、いえ…そういうわけでは…一度、家に帰り、じっくりと療養して、定期的に診察して様子を見ましょうということです…」
言い淀んだ先生を見ながらさらに言葉が無くなる。
「…」
「…」

 

カーテン越しに、心の中で私が突っ込む。
退院したいんやなかったんかい!

(おわり)

 

 

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