2016年度 農業大学校 特別講義 day3
「将来やりたいこと、今困っていること、そのうえで学びたいことは?」
- 地元特産品を活用しての商品開発、マーケティング方法は?
今日はこの問いに超実践的にお答えします。
まず基本は、生産者視点からいかに消費者視点に近づけるか、いかにユーザー視点に立てるかです。
でも、それが難しい。
実験してみましょう。
「あなたは、直売所でお米を販売するとします。そこにPOPを立てるとして、POPに何と書きますか?」
学生の答え。
- 粒が立ってます!
- 無農薬です!
- 本物の味、知ってますか?
- 小郡市産!
- ビタミンたっぷり!
- (生産者の顔写真、名前)
- (米作りの工程の写真)
- (成分表)
- ふっくらしてます!
- 今だけ、お買い得!
- 堆肥たっぷり!
どれが正解かはわかりませんが
失敗はわかります。
例えば、成分表を表示して
「うわ、この米、○○が豊富!」
って解る消費者がどれだけいるでしょう?
さらに言えば、
タンパク質は食味を低下させます。
でも、消費者はそんなこと知りません。
生産者からしたら
堆肥たっぷりの土づくりはこだわりだけど
消費者はあまりそんなこと知りません。
でも、農薬には敏感です。
ね、ユーザー視点に立つって、結構むつかしい。
とはいえ、
マーケット・リサーチしたり
ユーザー・インタビューしても
イノベーションは生まれません。
消費者の「あれも」「これも」の声を聞けば
足し算になり、デザインもブランディングも失敗します。
テレビのリモコンがいい例です。
次のstep。
マーケティングの4Pとは
- 製品(Product)
- 価格(Price)
- 流通(Place)
- プロモーション(Promotion)
前回お話ししましたが
農家として利益を上げるには
単価を上げることが何より重要。
ここで4Pの関係性を整理しておきましょう。
まず、製品のクオリティ。
それによって売る場所が決まります。
銀座のデパートで売ろうと思えば
やっぱり一流でないと。
銀座のデパートで売られている
ということがプロモーションになります。
それら、製品、場所、プロモーションの結果
価値が決定し、それが価格となります。
それらをまとまって、
ユーザーの心の中にできたイメージが
ブランドになります。
とすれば、やっぱり
何を作るかが大事。
では商品開発について
考えてみましょう。
ところで
会議には「流れ」「型」があります。
「共有」→「拡散」→「混沌」→「収束」→「合意」
です。
これらを一緒にやってしまうから
アイデアが出なくなります。
「○○なんてどうでしょう?」
と言っても
「できるわけないじゃん。カネどうすんの?」
って否定されたら
次の人は
「カネかかることダメなんだ」
と思い、意見できなくなり
結局、
「いままでと同じでいいか」
となります。
だから、拡散の段階で
評価したり、否定してはいけません。
評価も否定もしないから
思いっきり発想してみよう。
さて質問です。
「あなたは、イリコ生産者です。新たなイリコの商品開発するとして、何作りますか?」
学生の答え。
- ペットの餌
- クッキー
- ストラップ
- アイス
- せんべい
- ふりかけ
- 入浴剤
- 保湿パック
- アロマ
- キャンドル
- ポテチ
- チョコレート
- エキス
- ジュース
- 離乳食
- かきあげ
- 洗顔料
- パイ
- うどん
(笑)
いいですね。
イリコの入浴剤とか
普通は思いつきません。
イリコのパウダーを練りこんだうどん
湯がいてるうちに、ダシが取れるかも。
拡散の結果の斬新なアイデアです。
この中から
「新規性」「技術的可能性」「マーケット(ニーズ、リピート可能性)」
の観点から絞り込んでいきます。
じゃぁ、例えば
イリコを使った『高級つまみ』を開発するとなったとしましょう。
では、味はどうするか?
また発想です。
試作してみれば
本当に美味しいものができるアイデアもあるかも。
で、試作、評価、改良を繰り返していくしかありません。
で、商品ができたら
どこで売り
価格をいくらに設定し
どうプロモーションしていくか。
その結果、売れるか、売れないかが決まります。
食品企業は
こうしたことを
毎日、毎年繰り返しています。
農家が、地元特産品を活用しての商品開発する場合も
これくらいの努力は必要です。