女性セブン2017年10月19日号

もやし炒めに混ざった、プラスチックの破片。ご飯の中につまようじ。容器のふちには古いご飯がカピカピに乾いた状態でこびりついている。容器からは、シンナーのようなツンとした刺激臭が立ち上がってくる。

 

「ふたを開けると、容器とおかずのにおいが一気に混ざり合って、めちゃくちゃくさいんです。生ゴミやゲロと同じくらいのくささ。食べようとすると、あまりのにおいに吐きそうになって、ふたを閉じる毎日です。午後の授業はお腹が空いてつらいけど、ゲロを食べるよりはマシだから」(大磯町の中学生)

 

神奈川県大磯町で明らかになった「まずい給食」問題。2016年から2つの町立中学校で導入された民間業者の給食に、大量の食べ残しがあることが発覚した。2校の食べ残し率は平均26%、多い日は55%にものぼった。これは全国平均の6.9%をはるかに上回る。

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“まずい”だけならまだしも、冒頭のような異物混入が頻繁に発生していることも問題視された。保護者が胸中を明かす。

 

「騒動後、持参のお弁当と給食から選べるようになったのでウチの子も含め、ほとんどの生徒がお弁当です。給食を食べているのは、クラスに5人ほどのごく一部の生徒と先生くらいでしょうか。しかも、今も問題のあった給食業者のままです。対応が遅くて不誠実な学校には疑問と怒りでいっぱいです」

 

学校に取材を申し込むも、「対応できない」の一点ばり。教育委員会の回答も同様だった。これでは、生徒や保護者の不安はつのるばかりだ。

 

しかし、類似した問題は全国で散見される。跡見学園女子大学の鳫(がん)咲子教授が言う。

 

 

「大磯町のようなケースは初めてではありません。大阪市や神戸市でも同様の問題が起こっていました。『これは食事じゃなくて餌だ』という抗議がありましたし、異物混入が報告されたこともあります」

 

給食を取り巻く環境はかなり悪化しているのが現状である。それでも、学校給食の実施率は年々上昇している。

 

学校給食が始まったのは1889年。山形県の小学校で、貧困にあえぐ子供たちの救済が目的だった。そこから100年超。外食チェーン店やコンビニでも手軽においしい食品を手に入れられるようになった現代において、給食だけが、時代と逆行しているのはなぜなのか。

 

「1970年代頃までは、学校内に給食室をもっていて、調理員が作る方式が主流でした。しかし非効率的とされ、1985年以降は、いくつかの学校給食をまとめてまかなえる給食センターで、一括して調理することが進められました。さらに近年、民営化が進み、民間のデリバリー業者が請け負うことが増えました。民間業者の中にはコスト競争に負けないために人手を減らし、その結果、衛生管理さえままならない状況に陥ってしまったところもあります」(鳫教授)

 

 

大磯町の給食も民間のデリバリー業者に依頼している。急速な民営化が進む背景には子供の貧困問題も見えてくる。『すごい弁当力!』の著書がある食育研究家で作家の佐藤剛史さんが言う。

給食費が高い、払えないという一部の声を受け、行政や学校側は“より安い”民間業者に給食を依頼しようとする。当然、低コストで運営している業者は材料費や人件費を抑えようとするため、質の低い給食となってしまうケースが少なくない。だが、経済的貧困層の家庭の子供は給食のない土日に栄養摂取率が下がるというデータもあります。その意味では給食が唯一の栄養源である子供が存在する以上、一概に給食費を上げて給食の質を上げるわけにはいかないのが現実なのです」

 

 貧困家庭とともに、働く母親が増加したことも、給食に頼らざるをえない一因となっている。厚労省国民生活基礎調査によると、ワーキングマザーの数はここ10年で10%以上急増。68.9%の母親が働いている。中学生の息子を持つ、パート勤めの母親は、こんな苦悩を打ち明ける。

 

「給食があって助かるというのが本音。だけどもし大磯町の学校みたいに『お弁当』となったら、反対なんてとても言えない。『子供のことを考えてない』って批判されると思うし…。しかも、お弁当は家庭の事情が見えてしまうから、かなり気を使います。『昨日と同じおかずだと子供が恥ずかしいかな』とか。お弁当の話って結構ナーバスなんです…」

※女性セブン2017年10月19日号

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