食育研究家。九州大学講師/糸島市行政区長/1973年、大分県生まれ。農学博士。/年間の講演回数は100回を超え、大人向け学びの場である「大人塾」「ママ塾」「mamalink塾」等も主宰/主な著書に『いのちをいただく』『すごい弁当力!』『食卓の力』など、いずれもベストセラー/新聞掲載、テレビ・ラジオ出演も多数


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直売所論

2016年度 農業大学校 特別講義 day4(最終回)

 

www.goshisato1973.info

を読んだ学生から
「これからの直売所のあり方について、どう思いますか?」

ゴーシ先生、「昔は」
直売所の専門家でしたから、
めっちゃ語りますよ。

 

まずは直売所の歴史について。
他地域はどうか知りませんが
糸島で直売所ができ始めたのが
昭和60年代。
「椚野菜グループ」などが
そのはしりです。

 

【直売所の意義】

直売所のメリットとは何でしょう?

<生産者にとってのメリット>

  • 手数料や輸送費などを払わなくていい。
  • 即、現金収入。
  • 規格外でも出荷できる。
  • 加工品も売れる。
  • 自分で値段がつけれる。
  • 売り方を工夫できる。
  • ファン、リピート、指名買い。
  • 女性、高齢者の所得源になる、等々。

<消費者にとってのメリット>

  • 新鮮。
  • 安い。
  • 顔が見える。
  • ある意味、安全、安心。
  • 旬や食べ方などの情報ももらえる。

<双方にとってのメリット>

  • 交流ができる。
  • 関係性ができる。

 

【直売所のひろがり】

前原市の後押しもあって
いろんな直売所ができました。

ずらっと紹介すると…

  • 「一番田舎」
  • 「とまり新鮮組
  • 「南風台ふれあい夕市」
  • 「篠原のやおやさん」
  • 「波多江ふれあい夕市」
  • 「瀬戸土曜ふれあい夕市」
  • 「ねぎぼうず」
  • 「雉琴の市」
  • 「白糸の滝ふれあいの里」
  • 「怡土(いと)青空市」
  • 「ファームパーク 即売会」
  • 「西堂ふれあい市」
  • 「いはら山ふれあい市」
  • 「くぬぎ野菜グループ即売所」
  • 「前原農産本圃即売所」
  • 「多久の朝市会」
  • 「芥屋ふれあい市」
  • 「小富士物産直売所」
  • 「志摩の朝市」
  • 「志摩の四季」
  • 「可也ふれあい夕市」
  • 「ファームハウス」
  • 「緑の農園直売所」
  • 「福吉ふれあい朝市」
  • 「二丈ふれあい土曜夕市」

等々。

なつかしい(笑)
今、ほとんどないです。

当時は
グリーンツーリズム・マップ』
みたいなものが準備されていました。

消費者は
「あそこで卵を買って」
「あそこで水を汲んで」
みたいな
直売所巡りをする
みたいな楽しみ方がありました。
(これは私が実際にアンケート調査しました)

 

 

【大型直売所の出現と淘汰】

しかし、
だんだん、直売所の規模が大きくなっていきます。
年間の売り上げが
1000万を超える直売所、
さらには
1億を超える直売所が出現してきます。

 

そうするとお客さんは
そこに集中しはじめます。
規模の経済や
集積効果が働くからです。

 

直売所の場合はわかりやすく
「お客さん減少」→
「生産者、売れる直売所に出荷」→
「売れない直売所、品揃え悪くなる」→
「もっとお客さん減少」…
という悪循環に陥ります。

 

そして糸島の場合
「伊都彩菜」という
年間売上高40億円を超える
全国一の直売所が出現しました。

上に列記した直売所は
そのほとんどが姿を消しました。
淘汰が進みました。

市場原理
自由競争だから
それでいいのかもしれません。

日本一の直売所ができることで
観光客も多く地域に呼び込めるかもしれません。

 

 

【問題もある】

しかし
売上10億円の直売所が1つある地域と
売上1億円の直売所が10ある地域では
どちらが豊かか
どちらが活性化するかを
考える必要があるでしょう。

また、実際にこういう問題も生まれました。

近くに、直売所ができて
あるおじいちゃんは
野菜を作り、そこに出荷するのが
生きがいとなりました。

 

しかし、
大型直売所の影響で小さな直売所はつぶれました。


おじいちゃんは
大型直売所に生産者登録して
そこに出荷しようと思いましたが
遠いので軽トラを運転するのが不安。
家族からも止められ
直売所に出荷することができなくなってしまいました。

 

同じように
近くの小さな直売所なら
歩いて買いに行けたのに
そこが無くなってしまい
買い物難民も生まれてしまいました。

 

 

【直売所のスーパー化】

昔の小さな直売所は
ほったて小屋や
プレハブに
コンテナや木板を並べ
農家さんが農産物を直接売っていました。

 

現在の直売所は
最新のレジシステムが導入され
農家じゃないアルバイトさん
パートさんがレジを打っています。

 

確かに、農家さんが
直接、持ち込んではいますが
昔のように
生産者と消費者が直接交流をし
関係性を作る
なんて光景は見ることができなくなりました。

 

しかも、直売所づくりのデベロッパーがいて
だから、全国で人気の大型直売所を見てみると
結構つくりが似てる。

 

そういう意味で
直売所のスーパー化が進んでいます。

 

一方で、大型スーパーの中には
地産地消コーナー
直売コーナーができたりして
スーパーの直売所化も進んでいます。

 

直売所のスーパー化
スーパーの直売所化がすすむ中で
直売所はこの先
どこに向かえば生き残れるのでしょう。

 

 

【意義が失われるかもしれない】

例えば、直売所で販売されている農産物の中に
少し、「質」が悪いものがあったとします。

 

昔の直売所なら
「まぁ、あのおばぁちゃんが作ったものやけん」
と思い、次訪れた時に
「この前買った、○○、良くなかったですよ」
と声をかけ
「すいませ~ん、じゃぁ、これサービスしときます」
みたいなことが普通にできていました。

 

今の大型直売所であれば
すぐにクレームの電話でしょう。

だって、諸費者は
スーパーに買いに行ってるのと
同じ感覚ですから。

 

そしてそのクレームの量が多くなれば
規格、品質管理が厳しくなります。

「規格外でも出荷できる」
という直売所の意義の一つは
失われてしまいます。

 

 

では、ゴーシ先生なら
これからの直売所を
どうプロデュースするか。

 

 

続きはまた今度。